「健康診断で肥満を指摘された」
「精液検査の数値が悪かったのは、太っていることが原因でしょうか?」
「妊活のために、急いで痩せたほうがよいですか?」
男性妊活を始めて、体重と精子の関係が気になっている方もいると思います。
肥満や体重増加は、代謝、ホルモン環境、睡眠、運動習慣など、身体全体の状態と関係します。
一部の研究では、肥満や過体重の男性で、精子濃度、総精子数、運動率、正常形態率などが低い傾向も報告されています。
ただし、最初に知っていただきたいことがあります。
肥満だから男性不妊になる、痩せれば精液検査の数値が必ず改善する、と単純に判断することはできません。
精液検査の結果には、精索静脈瘤、ホルモン、遺伝学的な要因、発熱、睡眠、喫煙、飲酒、採取状況など、さまざまな要素が関係します。
この記事では、男性不妊と肥満の関係、BMIの確認方法、男性妊活中に見直したい7つのポイントを解説します。
この記事の結論
- 肥満や過体重と一部の精液所見との関連が報告されています
- 体重だけで男性不妊の原因を判断することはできません
- 急激な減量や極端な食事制限は避けます
- 食事、運動、睡眠、飲酒をまとめて確認します
- 精液検査で問題を指摘された場合は泌尿器科へ相談します
男性不妊と肥満には関係がある?
これまでの研究では、肥満や過体重と、男性の生殖機能との関連が検討されています。
報告されている主な項目には、次のようなものがあります。
- 精子濃度
- 総精子数
- 精子運動率
- 正常形態率
- 男性ホルモンを含むホルモン環境
- 性欲や勃起機能
ただし、すべての研究で同じ結果が出ているわけではありません。
肥満があっても精液検査の数値に問題がない方もいれば、標準的な体重でも男性不妊の原因が見つかる方もいます。
そのため、現在の体重だけを見て、男性不妊の原因を決めることはできません。
肥満が男性妊活と関係すると考えられる理由
肥満や体脂肪の増加は、身体のさまざまな働きと関係します。
男性妊活では、主に次のような点が考えられています。
ホルモン環境との関係
脂肪組織が増えると、男性ホルモンや女性ホルモンを含むホルモン環境に変化が生じる場合があります。
ただし、体重だけでホルモンの状態を判断することはできません。
性欲低下、勃起機能の低下、強い疲労感などがある場合には、必要に応じて医療機関でホルモン検査を受けます。
代謝や生活習慣病との関係
肥満は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝などの生活習慣病と関係します。
血糖値や血圧、肝機能などに問題がある場合、体重だけを見るのではなく、身体全体の状態を確認する必要があります。
睡眠との関係
体重が増えると、いびきや睡眠時無呼吸症候群などの睡眠問題が起こりやすくなる場合があります。
睡眠不足や睡眠の質の低下が重なっていないかも確認しましょう。
陰嚢周辺の温度との関係
体脂肪の増加、長時間の座位、通気性の低い衣類などが重なると、陰嚢周辺に熱がこもりやすくなる可能性があります。
ただし、「太っているから精巣が必ず高温になっている」と断定することはできません。
体重だけでなく、座っている時間、衣類、入浴、サウナなども含めて考えます。
まずBMIを計算してみる
BMIは、身長と体重から計算する体格の目安です。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
例えば、身長170cm、体重80kgの場合は、次のように計算します。
80÷1.7÷1.7=約27.7
日本では、一般的にBMI25以上が肥満の目安とされています。
ただし、BMIには筋肉量や脂肪のつき方が反映されにくいという限界があります。
筋肉量が多い方では、BMIが高くても体脂肪がそれほど多くない場合があります。
反対に、BMIが標準範囲でも、腹囲が増えていたり、内臓脂肪が多かったりする場合があります。
そのため、BMIだけでなく、腹囲、体重の変化、血液検査の結果なども一緒に確認します。
男性妊活中に確認したい7つのポイント
① 現在の体重だけでなく、体重の変化を確認する
まず確認したいのは、現在の体重とBMIです。
それと同時に、ここ数年の体重変化も振り返ってみましょう。
- 就職や転職後に体重が増えた
- 結婚後に食事量が増えた
- 在宅勤務になって運動量が減った
- 夜勤が始まって食事時間が乱れた
- 禁煙後に間食が増えた
- 1年間で5kg以上増えた
体重が増えた時期と、仕事、睡眠、食事、運動の変化を一緒に確認すると、見直すべき部分が分かりやすくなります。
② 食事量と食事時間が乱れていないか
男性妊活というと、亜鉛やCoQ10などの栄養素に意識が向きやすいと思います。
しかし、特定の栄養素を追加する前に、食事全体を確認することが大切です。
- 朝食を抜いて夜に多く食べる
- 夕食が深夜になる
- 早食いが習慣になっている
- 丼物や麺類だけで済ませることが多い
- 揚げ物や加工食品が多い
- 野菜、海藻、きのこ類が少ない
極端に食事量を減らすのではなく、まず現在の食事内容と時間を記録してみましょう。
「何を食べてはいけないか」だけではなく、必要な栄養を無理なく取れる形に整えることが重要です。
③ 甘い飲み物や間食が増えていないか
食事量は多くないのに、体重が増えている方もいます。
その場合は、飲み物や間食を確認してください。
- 砂糖入りのコーヒー
- 清涼飲料水
- エナジードリンク
- 仕事中のお菓子
- 夜のアイスやスナック菓子
- 休日のだらだら食べ
こうした食品を完全に禁止する必要はありません。
まずは、どのくらいの頻度で取っているかを把握することから始めます。
④ 飲酒量が多くなっていないか
お酒にはアルコールだけでなく、糖質や一緒に食べる料理のエネルギーも関係します。
次のような状態があれば、飲酒習慣を確認してみましょう。
- ほぼ毎日飲んでいる
- 飲み始めると量が増える
- 締めの食事を取ることが多い
- 寝る直前まで飲んでいる
- 休肝日がほとんどない
- 飲酒によって睡眠が乱れている
男性妊活中だから一滴も飲んではいけない、という意味ではありません。
飲酒量、食事量、睡眠への影響をまとめて考えます。
⑤ 座っている時間が長くなっていないか
長時間のデスクワークが続くと、日常の身体活動量が少なくなります。
仕事で一日中座っている方は、次の状態になっていないか確認してください。
- 通勤以外ほとんど歩かない
- 一度座ると2〜3時間動かない
- 休日も座って過ごすことが多い
- 階段をほとんど使わない
- 運動習慣がない
いきなり激しい運動を始める必要はありません。
まずは、定期的に立つ、少し歩く、階段を使うなど、日常の身体活動を増やすところから始めます。
持病や関節の痛みがある方は、医師などへ相談しながら運動内容を決めてください。
⑥ 睡眠不足やいびきがないか
体重管理と睡眠は別々の問題ではありません。
睡眠不足が続くと、食欲や食事時間が乱れたり、日中の活動量が減ったりすることがあります。
また、肥満がある方では、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性にも注意が必要です。
- 大きないびきをかく
- 睡眠中に呼吸が止まっていると言われる
- 朝起きても疲れている
- 日中の眠気が強い
- 朝に頭痛がある
- 高血圧を指摘されている
当てはまる場合には、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来などへ相談してください。
⑦ 健康診断の結果を確認しているか
体重だけでなく、健康診断の結果も確認しましょう。
特に確認したい項目には、次のようなものがあります。
- 血糖値・HbA1c
- 血圧
- 中性脂肪
- LDL・HDLコレステロール
- AST・ALT・γ-GTPなどの肝機能
- 尿酸値
異常を指摘されている場合には、自己流のダイエットだけで済ませず、医療機関へ相談してください。
糖尿病や高血圧などの治療を受けている場合、薬を自己判断で中止してはいけません。
男性妊活のために急いで痩せるべき?
次回の採精や体外受精が近いと、「できるだけ早く体重を落としたい」と考える方もいます。
しかし、極端な糖質制限、断食、過度な運動などによって、短期間で大幅に体重を減らすことはおすすめできません。
急激な減量によって、疲労、睡眠不足、栄養不足、筋肉量の低下などが起こる可能性があります。
男性妊活では、体重計の数字だけを減らすことが目的ではありません。
必要な栄養を確保しながら、続けられる食事と活動習慣をつくることが大切です。
体重をどの程度減らすべきかは、現在のBMI、腹囲、持病、血液検査、服薬状況などによって異なります。
肥満症や糖尿病などがある方は、医師や管理栄養士へ相談してください。
体重を落とせば精液検査の数値は改善する?
減量によって、身体全体の代謝や健康状態が変化する可能性はあります。
一方で、減量すれば精子濃度や運動率が必ず改善するとは言えません。
精液検査の結果には変動があり、次のような条件も関係します。
- 禁欲期間
- 採取状況
- 発熱や感染症
- 睡眠や疲労
- 喫煙や飲酒
- 精索静脈瘤
- ホルモンや遺伝学的要因
精液検査で問題を指摘された場合には、体重だけを原因と考えず、泌尿器科や男性不妊を扱う医療機関で確認してください。
体重を見直してから結果が出るまでの時間
精子がつくられ、成熟するまでには一定の時間がかかります。
そのため、男性妊活の生活習慣を考える際には、およそ3か月という時間軸が一つの目安になります。
ただし、「3か月取り組めば精液検査の数値が改善する」という意味ではありません。
また、次回の採精まで1か月しかない場合でも、今から始められることはあります。
- 睡眠時間を確保する
- 飲酒量を確認する
- 間食や甘い飲み物を減らす
- 座り続ける時間を減らす
- 必要な医療機関を受診する
次の精液検査、採卵日に合わせた採精、人工授精、体外受精などの予定から逆算して考えましょう。
男性不妊に対する鍼灸と体重管理の考え方
当院では、鍼灸や整体を受ければ体重が減る、あるいは精液検査の数値が改善するとは説明していません。
鍼灸は、肥満症、糖尿病、ホルモン異常などに対する医療機関の診断や治療を置き換えるものではありません。
医療機関での検査や治療を優先しながら、男性妊活に向けて身体の状態を整えておきたい方を、次の3つの柱でサポートしています。
- 施術:鍼灸や整体による身体づくり
- セルフケア:自宅で続けられる身体活動やケア
- 生活習慣:食事、睡眠、運動、飲酒などの整理
高麗手指鍼は、手に身体の各部位が対応しているという考え方をもとに、手にある精巣のツボへ刺激を行います。
施術だけに任せるのではなく、現在の体重、食生活、睡眠、仕事中の姿勢、次回の採精予定などを確認しながら、現実的に続けられる身体づくりを一緒に考えます。
男性不妊に対する鍼灸の役割と、対応できないことについては、次の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
BMIが25以上なら男性不妊ですか?
いいえ。BMIが25以上というだけで男性不妊と判断することはできません。精液検査、診察、必要に応じた血液検査や超音波検査などを組み合わせて確認します。
何kg痩せれば精子の数が増えますか?
「何kg痩せれば精子が増える」という基準は確立していません。適切な目標体重は、現在の体格、腹囲、持病、血液検査などによって異なります。
体外受精の前に急いでダイエットすべきですか?
極端な食事制限や急激な減量は避けてください。次回の採精予定と現在の健康状態を確認し、医師や管理栄養士などへ相談しながら進めることをおすすめします。
筋肉質でBMIが高い場合も肥満ですか?
BMIだけでは、脂肪と筋肉を区別できません。筋肉量が多い方は、腹囲、体脂肪率、健康診断の結果なども含めて判断します。
サプリを飲めば体重の影響を補えますか?
特定のサプリだけで、肥満や生活習慣の影響を補えるとは限りません。サプリを追加する前に、食事、睡眠、運動、飲酒、健康診断の結果を整理することが大切です。
運動は激しいほうがよいですか?
必ずしも激しい運動が必要ではありません。運動習慣がない方は、歩く時間を増やす、定期的に立つなど、継続できるところから始めます。持病がある方は医師へ相談してください。
鍼灸で痩せられますか?
当院では、鍼灸だけで体重が減るとは説明していません。施術に加えて、食事、身体活動、睡眠などを整理し、男性妊活に向けた身体づくりを支援します。
まとめ
男性不妊と肥満について、男性妊活中に確認してほしいポイントを解説しました。
確認したいのは次の7つです。
- 現在の体重と、ここ数年の体重変化
- 食事量と食事時間
- 甘い飲み物や間食
- 飲酒量
- 座っている時間と身体活動
- 睡眠不足やいびき
- 健康診断の結果
肥満や過体重と、一部の精液所見との関連は報告されています。
しかし、体重だけで男性不妊の原因を判断することはできず、痩せれば精液検査の数値が必ず改善するとも限りません。
精液検査で問題を指摘された場合には、まず泌尿器科や生殖医療を担当する医師へ相談してください。
そのうえで、次の採精や不妊治療に向けて身体の状態を整えておきたい方には、鍼灸や整体だけでなく、食事、睡眠、運動なども含めてお伝えします。
この記事を書いた人
真杉孝博(鍼灸師)
男性不妊専門 ますぎ鍼灸院院長。高麗手指鍼に10年以上取り組み、医療機関で検査や治療を受けている男性の身体づくりを、施術・セルフケア・生活習慣の3つから支援しています。
男性不妊専門 ますぎ鍼灸院
〒162-0805
東京都新宿区矢来町124-3 ブリス神楽坂205
東京メトロ東西線 神楽坂駅2番出口(矢来口)徒歩1分
電話:03-6262-6835
現在受けている不妊治療や検査結果、次回の採精予定など、分かる範囲でお伝えください。すべての検査結果がそろっていなくてもご相談いただけます。
参考資料
- American Society for Reproductive Medicine「Obesity and reproduction: a committee opinion」
- Association between body mass index and semen quality: a systematic review and meta-analysis
- Male adiposity, sperm parameters and reproductive hormones: a systematic review and meta-analysis
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。精液検査の結果、肥満症、糖尿病、高血圧、服用中の薬などについては、医師などの医療専門職へご相談ください。鍼灸施術の感じ方や経過には個人差があり、精液検査の数値変化や妊娠を保証するものではありません。






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